e-OHNO MAIL NEWS 第183号

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  e-OHNO MAIL NEWS 第183号 2019/12/25

      https://www.ohno.mgmt.waseda.ac.jp/wordpress/

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こんにちは。今月号のe-OHNO MAIL NEWSの編集を担当させて頂くこととなりました、学部4年の摩嶋翼と申します。

今回のメールマガジンは、以下のコンテンツでお送りいたします。

■ 今月号のコンテンツ ■ (敬称略)

【1】歴史の一コマに存在する私たちって? 大野高裕

【2】ビジネス最前線       井上順司

【3】リレーエッセイ第18号

(シニアの部) 林昌幸

(中堅の部)  佐藤貴英

(若手の部)   永田拓也

【4】OB/OG会報告          島崎芳幸

【5】OB/OG会報告         (幹事:田中・富田)

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【1】歴史の一コマに存在する私たちって?  大野高裕

早いもので、今年もわずかとなりました。

11月30日に開催したOB/OG会には、別コーナーにあるご報告の文章と写真を見たいただいてもお分かりいただけますが、大変に多くの方々に参加していただき、それはそれはものすごい盛り上がりとなりました。参加してくださった皆様、そしてちょっと都合がつかなくてご参加が叶わなかった皆さま、そして会を準備してくれました現役学生の皆さま、本当にどうもありがとうございました。心から感謝しています。

さて、今年は元号も「令和」に改まり、新たな時代の幕開けとなりました。私は昭和の生まれですが、子供の頃は「明治」「大正」「昭和」の3つの時代が自分にとってのリアルな時間範囲でした。明治生まれのお祖父ちゃんやお祖母ちゃんがいて、大正生まれの父がいて、ということでした。それも明治といっても明治末期からのことで、日清戦争も日露戦争も第1次世界大戦も物語としての「歴史」の中にありました。そして日支事変で大陸に行った祖父、学徒出陣で大東亜戦争を戦った父たちが生臭い歴史的な大事件にかかわった存在であり、つまり、1930年から1970年くらいまでの40年間がリアルな時間範囲だったのです。私にとってはまだ敗戦のにおいや傷跡がどこか町中に残っていた(たとえば防空壕などもありました)ものの、高度成長にまっしぐらで、今日よりも明日の方が豊かに思える、そんな楽観的な時代を子供のころに生きていたように思います。社会がどんどん豊かになるので、その流れに乗っていれば自分も豊かになれる。そんな価値観だったと思います。だから、今でも何事にも楽観的で、「なあに、何とかなるよ」「宵越しの銭は持たない」「明日は明日の風が吹く」といったお気楽ライフスタイルを今も続けています。

今の、そしてこれからの子供たちにとっては、「昭和」「平成」「令和」がひとくくりの時代空間になります。明治は45年、大正は15年。昭和が63年ありましたが、これになぞらえると昭和は63年、平成は30年なので、ちょうど昭和50年以降、つまり1975年以降ぐらいからがリアルな時間範囲となるわけで、それ以前はもはや歴史の中にあると言ってよいのでしょう。それは日本にとって高度成長の最終期のバブルは向かったものの、見事に崩壊して、失われた30年を経て再び立ち上がってきた、という時間範囲ということになります。バブルって気違いじみた好景気の話は聞いたことをお父さん・お母さんたちの話で聞いたことはあるけれど、自分たちは安全着実に力を積み重ねていかないと、社会を頼っていても全体底上げ的に生活がよくなることはない。社会に流されずにしっかりと自分を持って生きていこう。というのが、今の子供たちの最大公約数的な価値観になるのではないかと思います。

私の頃と今の時代とどちらが楽とか得ということはありません。どんな時代であっても生き抜く強さのあり方と楽しみ方がそれぞれにあるのだと思います。時代は環境にすぎません。私たちの世代のように、周りに合わせなければ社会の流れに乗れなくて、取り残されてしまいそうだった世代の人生と、これまでの「勝利の方程式」が陳腐化した大人たちの常識に拘泥されず、様々で数多くのチャレンジの機会が社会で待っていてくれる、そんなこれからの時代を比較しても、生き方の工夫が違うだけです。各自がどこに生きがいや価値観を見出すのか、そこに幸せのポイントがあるだと思います。

ところで、先の敗戦1945年から来年2020年で75年ということにあるわけですが、75年を明治維新1868年からの年月に当てはめてみると1943年、すなわち大東亜戦争の真っ最中ということになります。明治維新から先の大戦までには長い時間が経ったような印象があります。小学校の教科書でも学んだように、大きな内戦を含めた戦争だけでも、西南戦争、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦そして大東亜戦争と5つもありました。そしてちょんまげを切り刀を捨てて、和服から洋服に着替えて、そして蒸気機関車が走り、自動車、電車も走り、飛行機も飛びました。それだけでも、ものすごい変革の連続だっただけに、とてつもなく大きな時間経過があったような錯覚に陥ります。しかしたった75年なのです。

経過年数だけで言えば、同じ75年の年月が1945年の戦後から今日の2020年まで積み重なってきたのです。ちょっと後世の人たちから見れば、この75年かを一つの歴史とみて小学校の教科書などに書くのでしょう。いったいどんな風に捉えられるのでしょうか? 私たち生身の人間には自分が歴史の一部だなどとはとても実感がわかないのですが、私たちの時代も、確実に事実に基づき総括されていくのです。そう考えると、たまには自分でも現代を要約してみることも必要なことかもしれません。なぜなら、今、後世に向けて自分がすべきことが見えてくるかもしれないからです。もちろん、人それぞれの考え方捉え方で総括してみるべきものだと思いますから正解はなく、それぞれの価値観に基づいて、事実も解釈も選択されるものであるべきだと考えます。

では、私がこの直近75年間を歴史として要約してみるとどうなるでしょうか?

日本は敗戦によってアメリカの保護下に入り、自立性は失ったものの、その代わり経済力を高めることに専念して、一時はアメリカと肩を並べるかのごとき経済力となりました。それが75年の歴史の前半だったと思います。しかし、保護者であるアメリカの怒りを買ってデフレの30年に沈みました。アメリカはソ連との冷戦に勝ったものの、相対的に経済力や軍事力に基づく世界支配力は低下して、現在は中国の世界覇権争いの挑戦を受けています。これが最近75年の歴史の後半戦です。日本はこのままアメリカの保護下にいるのか、中国の保護下に入るのか、それとも自主独立の道を歩むのか、あるいはドイツがEUの中心に座っているように、東・東南アジアの連合体の中心的存在として第3極を構成するのか・・・、地政学的な制約条件の下で、確実に選択の岐路に向かっているのだと思います。「75年間平和だったのだから、これからも努力しなくても、ずーっと平和であるに違いない」などという妄想は成り立ちません。

一方、技術面・生活面ではまず、機械技術や電気技術がシロモノ家電(洗濯機・冷蔵庫・掃除機)を生み出し、人手でやっていたこと、時間がかかっていたことを機械に置き換えて、生活の省力化・時間短縮を図ることが進展しました。これが前半戦でしょう。後半戦では飛行機の高速化・大型化やロケット、衛星による輸送・情報収集手段の超高度化、コンピュータによる高速計算・ビッグデータ処理、そしてインターネットをその典型とする通信技術が圧倒的な発展を遂げました。それらの技術が組み合わせることによって、スマホ、AI、ロボットなど、これまでの生活において人が行うことができなかったことが実現するように始めました。前半戦が生活をどうやって便利にするかというHow中心だったのが、後半戦ではドン汗活を作るのかというWhat中心へと移行していったのだと思います。日本はHowは得意だったのですが、Whatにうまく対応できずに来ているのが今の姿ではないでしょうか。

「What」と「How」の言い方を変えれば、「目的」と「手段」に置き換えることができるように思います。やるべきこと、作るべきものは与えられていて、それをどういう「手段」で実現するかが「How」であるとすれば、何をやるべきか、作るべきかという「目的」を生み出すのが「What」と言うことができます。目的と手段とは階層構造になっているわけですが、この直近75年の前半では、その階層構造を目的から具体的な手段へと降りていくプロセスがメインであったものが、後半の時代では手段からより抽象的な目的へと上がっていくプロセス形態に転換したと見てよいのではないかと思います。

ということは物事の発想そのものが転換したということを意味するわけですから、求められる能力が大きく転換しつつあるということになります。したがって大学を含む人材育成においても、これまでの延長線上のことを行うのではなく、Whatを産み出せるような目的志向の教育を行わなければならない。そうした転換点に来ていると考えます。大学入試改革も訳の分からない形でとん挫していますが、テクニック面での些細な議論で大きなトレンドから外れてしまうのは本末転倒で残念なことです。歴史的な観点から物事を見れば本質と大きな潮流が見えてきます。そうした歴史という作業を通じて、私たち自身のこれからのあり方を正月休みを使って考えてみるのも一興かもしれませんね。

今月の写真は冬を迎えた理工キャンパスの朝です。

では、皆さま、より良い年をお迎えください。

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【2】ビジネス最前線  井上順司

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2019年の最後の「ビジネス最前線」を飾っていただくのは井上順司さんです。井上さんにはISO14000シリーズをはじめとする、ISO認証制度のお仕事を現在しておられます。ご承知の通り、現代はコンプライアンス、ガバナンスといった自律性が企業に求められ、私たち自身も日々、それらを心掛けながら仕事をしなければなりません。そうした状況への対応のヒントを書いていただきましたので、楽しみながら勉強しましょう。よろしくお願いいたします。

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1984年学部卒の井上順司と申します。

先日は大野研究室のOB・OG会に出席させていただき、ありがとうございました。

大野先生を始め尾関研・大野研出身の皆様と楽しいひと時を過ごすことが出来ました。

大野先生からのご指名で、寄稿させていただきます。

私は、1984年に松下電器産業(株)に入社して、パソコンの事業部でLet’s noteでの

システム開発やソリューション営業、システム販売会社で映像配信などのデジタルAVの

SI事業責任者をした後、本社情報システム部門で家電系情報システムの責任者、

家電販売会社でECシステム(Panasonic Store)や会員サイト(CLUB Panasonic)の

情報セキュリティ対応などの仕事をしました。

2年前から(株)日本環境認証機構に出向して、情報セキュリティマネジメントシステム

認証(ISMS)の営業の仕事をしていましたが、本年9月に出向先に転籍して、パナソニック

(株)は8月末で定年扱いで卒業しました。

現在勤務しております(株)日本環境認証機構(JACO)は、1994年に電機メーカ

10社が出資して設立したISOの認証を行う会社で、環境(EMS:ISO 14001)、品質

(QMS:ISO 9001)、情報セキュリティ(ISMS:ISO/IEC 27001)、食品(ISO 22000)、

労働安全(ISO 45001)などの審査・認証を行っています。

社員は約100名、契約社員が約250名で、パナソニック、日立、三菱、東芝、富士通、

NEC、ソニーなどの各社から概ね50代半ばで出向して、60代以降も嘱託社員・契約社員

として多くの方が活躍しています。

私は、情報セキュリティ(ISMS)関連の認証部門(ISビジネスユニット)を担当しています。

「ISO」とは、International Organization for Standardization(国際標準化機構)のことで、

工業規格を世界的に標準化する団体のことです。ISOが作成している規格には、製品規格、

試験規格、マネジメントシステム規格などがあります。

マネジメントシステム認証では、企業がISO規格の要件「要求事項」を満たすシステムを

構築する必要があり、認証機関は企業を審査して規格に適合していると判断すれば認証登録、

公表されることになり、この制度を「ISO認証制度」と呼んでいます。

企業にとってISO認証を取得するメリットは、対象マネジメントシステムの基準を満たす

だけの堅実・誠実な経営であることが国際的に証明され、会社の信用を得ることが出来ます。

企業によっては、マネジメントシステムの認証取得を取引条件にしているところもあります。

マネジメントシステムは、トップマネジメントの関与が必須であり、事業活動のPDCA

サイクルを回して行くことが要求されています。また、規格への適合性だけでなく有効性の

評価も求められており、認証取得がゴールではなく、継続的な改善が必要となります。

1990年代からEMS、QMSの認証件数が増えて来て、2000年代からはISMSの

認証が始まり現在も増えております。最近では、SDGsの関係でEMSも伸びて来ており、

ISMS関連ではクラウドセキュリティ認証(ISO/IEC 27017)が伸長しています。

認証の分野でも世の中の動きに合わせて、新しい認証の開発が必要で、経済産業省などと

連携して新しい認証制度(ISO以外も含めて)の検討にも参画しています。

私が担当しております情報セキュリティ関連の分野ですが、サイバー攻撃などで多くの企業で

情報セキュリティ事故が発生しています

IPA(情報処理推進機構)で公表されている「情報セキュリティ10大脅威」を参照下さい。

https://www.ipa.go.jp/security/vuln/10threats2019.html

ICTの活用が企業の成長の鍵を握ってきている中で、情報セキュリティリスクを抑え、万が一

インシデントが発生した場合でも影響を最小限に抑えるためには、企業として一定の基準に基いた

ルールを定めて、これらを教育して組織に衆知徹底して着実に実行して行くことが求められます。

これらの実施にあたっては、ISMSを構築して運用することが早道となります。

ISMSの構築には、文書の整備や内部監査・マネジメントレビューの実施など、構築・運用に

パワーがかかる部分もありますが、トップを巻き込んで組織全体のガバナンスを強化するため

には大変有効です。

その上で第三者からの認証を受けると、その企業の信頼性が飛躍的に向上すると思います。

今後は、従来のISMS(ISO/IEC 27001)に加えて、分野に特化したセクター規格(クラウド、

個人情報など)や、中小製造業向けの「技術等情報漏えい防止措置認証」や政府調達基準となる

「クラウドサービス安全性評価基準監査」などの新しい認証への対応も行います。

情報セキュリティ認証(ISMS)取得がまだの企業では、認証取得のご検討をお薦めします。

私は本年よりセカンドステージに入りました。

私の職場の主力は60代の審査員の方々で70代の方も元気に活躍しています。

私も認証の分野で研鑽を重ねて、お客様に長くお役立ち出来るようにしたいと思います。

パナソニックの外に出て、人の繫がりや縁がとても大事だということを改めて感じております。

今の会社に来て出合った方や、新しいお客様とお会いした時に、どなたかを介して知っていたり

繋がっていたりすることがあります。

先日のOB・OG会でも、ある方の部署が、私の部門でISMS認証させていただいており、

少し前に審査を受けたと話題になりました。

尾関研・大野研出身の皆様とのご縁も大切にして行きたいと思います。

これからも、宜しくお願い申し上げます。

追伸 ISOや情報セキュリティ関してお問合せなどございましたら、何なりとご連絡下さい。

井上順司 E-mail:inoue-junji@jaco.co.jp  URL http://www.jaco.co.jp/ 

写真 溜池山王の事務所にて(後方が首相官邸)

宮崎大学でのISMS認証登録証授与式

http://www.jaco.co.jp/info/t510.htm

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【3】リレーエッセイ第18号

(シニアの部) 林昌幸

(中堅の部)  佐藤貴英

(若手の部)  永田拓也

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(シニアの部) 林昌幸

95年学卒の林と申します。毎月メールマガジンを楽しみにしておりましたが、社会人25年目の節目に、まさか自分がエッセイを書く機会をいただけるとは考えておりませんでした。大した経歴ではありませんが、こんな変わり者もいるのかと少しばかりお時間をいただければと思います。

まず略歴をお伝えしますと、本庄高等学院を卒業し、工業経営学科に入学いたしました。学卒で、東食に入社。E&Yのコンサルティング会社を経て、メリルリンチ日本証券に転職。同社の事業方針転換に伴い、GMACに転じた後、リーマンブラザーズ証券に入社。同社破綻後は、米投資ファンドのミレニアム・キャピタル・マネジメントに勤務。その後、米国留学、実家の家業経営、人材紹介コンサルタントなどを経て、現在はノースイースト・キャピタルマネジメントにてアセットマネジメント業務に従事しております。

人生の分岐点というのは、数多く存在し、分岐点に達するたびに意思決定を行っています。自分自身を振り返ってみますと、転職という機会に何度も遭遇し、そのたびに意思決定を行ってきました。学卒で日本の専門商社を選択しましたが、いつしか外資系金融機関の投資部門に籍をおくようになりました。転職をするたびに企業ごとの文化の違いを肌で感じてきたわけですが、特に日系企業と外資系企業の文化の違いは非常に大きなものでした。

大学を出て最初に入社したのが東食という食品専門商社でした。会社の規模でいいますと、売上高約1兆円で、当時売上高で順位を競っていた商社のランクでいうと13位だったと思います。配属は、希望どおり経理部となり、ココア豆を輸入する部門の営業経理を担当していました。会社の雰囲気は、商社としてはおっとりとしていましたが、若手は遅くまで頑張れという雰囲気があり、営業、管理問わず、遅くまで働くのが当たり前でした。通常期で21時から23時、決算期は終電で帰るという生活をしていました。会社の寮に入っていたので、常に会社にいるような生活でした。職場や寮に加え、社内の部活動に参加して(寮生はなかば強制参加なのですが)いたこともあり、社会人というよりも会社人という感じの充実した生活を送っていました。

充実していた会社人生活をさらに強固な人間関係にした出来事が会社更生法の申請でした。いわゆる倒産です。倒産をすると人員整理が行われ、社員が散り散りになるのは事実ですが、私が担当していたココアの営業部隊は収益部門として事業継続となりました。このおかげで経理担当の私も仕事を失うことはなく、更生手続という新しいミッションの分だけ仕事が増えました。会社を立て直すぞという機運が高まり、残った社員一丸となって更生計画の策定にあたりました。こういった機運の高まりが企業再生では最も重要であり、不思議に感じるでしょうが社員のモチベーションアップも日本企業ならでは、だったような気がします。

東食の更生計画が認可になったのをきっかけに、転職をいたしました。大手金融機関の不良債権処理やそれに伴う銀行の合併など、世の中は不良債権一色でした。東食で経験した会社更生手続の経験が評価され、その後は、E&Yのコンサルティング会社、メリルリンチ日本証券、GMAC、リーマンブラザーズ証券と外資系企業を渡り歩くこととなりました。

私が経験してきた外資系コンサルや外資系金融機関で一番重要なことは実績です。プロセスがどうであれ、実績を残すか否かで評価され、実績がでない場合には解雇されるというのが一般的でした。また、部門の新設、統合、廃止といった組織の新陳代謝も盛んであり、常に組織の形が変化するというのも特徴の一つだと思います。実績を残させるという意味では、従業員の福利厚生がしっかりしているのも外資系金融機関の特徴だと思います。E&Yのコンサルティング会社に移って最初に驚いたのが、残業食事代の支給でした。そしてメリルリンチ日本証券に移って最初に驚いたのが、夜10時以降のタクシー代支給でした。

実績をあげるために自分自身のビジネス(業務)を確立するわけですが、このビジネスの確立において重要なのは、合理的根拠を示すということです。Reasonably Estimatedといっていましたが、この根拠を示すために、外部専門家を使うことを躊躇しないのも外資系企業の特徴だと思います。私が担当していた不良債権投資では、コンサルタント、会計士、税理士、弁護士などの専門家の協力を仰いでおりました。実績を残すためには、こういった専門家を使いこなす能力も求められます。また、金融用語にレバレッジという言葉があります。仕事にもレバレッジをかけるのが外資系金融機関の特徴です。自分一人でやったら10のエネルギー使うとします。これを1から10まですべて自分でやるのではなく、10のうち9を外部専門家に委託し、自分自身は1だけエネルギーを使います。そうすることで、あと9のエネルギーが使えることになります。すると、10使うはずだったエネルギーで100のことができるようになります。こうして仕事にレバレッジをかけることで、実績を10倍に伸ばすことが可能になります。ただ、外部専門家を使うにはコストが必要ですから成果から専門家コストを差し引いた分が純粋な実績です。この実績に見合った果実(給与)を受け取れるのも外資系の特徴でしょう。

まとまりのない話にお付き合いいただき、ありがとうございました。事業ポートフォリオ(PPM)の考え方に従うと、花形事業がいつまでも花形事業であるわけではありません。いつしか、競合が現れ、事業は廃れていきます。常に新しいことへの嗅覚をもつことが、日系、外資を問わず重要ではないかと思います。というところで、次号の同期の鈴木幸路君に、引き継ぎたいと思います。

(写真はカリフォルニア大学に留学していた時のものです(右から2人目))

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(中堅の部)  佐藤貴英

皆さん、こんにちは。

2007年修士卒の佐藤貴英です。

大野研時代はファイナンスチームで金融工学を学んでいたこともあり、当時生保では珍しく専門職採用をしていた第一生命保険に入社し、現在も資産運用業務に従事しております。

外債投資、ニューヨーク勤務、アセットアロケーターを経て、現在は債券部でチーフファンドマネージャーとして、日本国債や円金利スワップなどの円金利ポートフォリオ管理を担当しています。

皆さんご存知のとおり、現在の日本の金利は残存10年程度までマイナス圏に沈み、日本国債をコアアセットとする生保運用は非常に厳しい環境下にあります。マイナス金利ではお客さまにお約束した予定利率をとらえた運用ができずに逆ざやとなってしまいますから、これまでと同じ伝統的な資産運用だけでなく、デリバティブなどを活用した様々な工夫が求められています。また、一方で金融規制動向は年々厳しくなり、資産・負債双方を考慮した総合的な金利リスクコントロールも大切な仕事となっています。

かつては生保運用の花形であった債券部も、現在はこうした低金利環境や規制によりできることが少なく退屈な部署と思われがちですが、今でも当社総資産の大半である数十兆円のポートフォリオを少ない人数で管理し、アイデア1つで大きく動かせることは、やはり生保運用の醍醐味であり、誇りでもあります。

卒業から13年という月日が経ちましたが、今の私の知識の源泉や論理の組み立て方のベースには、大野研での4年間の日々が常にあります。朝から夜までゼミ漬けで、そのまま研究室で寝て朝から先輩方に論文を見て頂いていた生活は、ワークライフバランスが重視される今では考えられないかもしれませんが、間違いなく私の財産となっております。

最近は急に寒さが厳しくなってきましたが、もうすぐ年末ですね。あの頃、クリスマスも正月も研究室へ行き、論文発表に向けて追い込み、当時の彼女にフラれたのを思い出します…笑。いや、彼女にフラれたのを論文のせいにしてはいけませんね…。論文生はこれから辛い時期かもしれませんが、今後何十年と活きてくる経験だと思いますので、ぜひ頑張ってください!

次は後輩、谷内君にバトンタッチします。よろしくお願いします!

添付写真は娘2人と北海道旅行での1枚です。

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(若手の部)  永田拓也

皆様ご無沙汰しております。2015年学部卒の永田拓也です。

大学卒業後51号館14Fにある研究室にて修士課程を終え食品メーカーに入社しました。そして、3年目を迎えた今年の秋に異動となり、現在は長野県にある自社工場で品質管理をしております。食品の品質管理ということで、菌や微生物、機械設備など在学時には少し遠ざかっていた分野での知識が求められる時が多々あり、勉強に追われる毎日を過ごしていますが、新しい知識が身につくことに楽しさを感じながら仕事をしております。

大野研在籍時には医療経営ゼミを専攻し、福島県いわき市にある病院と共同研究をしておりました。当時も私自身無知な分野であり、なかなかテーマが定まらず大野先生には大変ご迷惑をお掛けしました。しかし、今回のリレーエッセイを寄稿するにあたり当時を回顧しておりますが、知識の乏しい分野での研究テーマの選定やデータ収集に奮闘した医療経営ゼミでの経験が、新しい分野に辟易せず挑戦できる私の拠り所となっているのではないかと感じております。

これからも皆様においしいものをお届けできるよう、日々新しいことを吸収しながら仕事に取り組んでいきたいと思います。(皆様、野菜ジュースはケチャップの会社で購入をお願いしますね。)

 最後に写真についてですが、先日オーストラリア旅行に行った際に撮影したオペラハウスの写真を選びました。最近フィルムカメラで撮る写真の味にはまっており、カメラ片手に様々なところへ出かけて写真を撮るのが趣味になっています。写真はモノクロフィルムで撮影したもので、後から編集したわけではないんですよ。もし興味を持った方がいらしたら、ぜひフィルムカメラを手にしてみてください!

さて、同期リレーが続いていますが、次回も同期の神田大成さんです。よろしくお願いいたします。

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【4】OB/OG会報告         島崎芳幸

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4年ぶりの大野研究室・尾関研究室のOB/OG会を終えて

2016年卒の島崎芳幸です!

2019年11月30日(土)に開催されました、大野研究室・尾関研究室OB/OG会に参加し、この度、その感想を書かせていただくことになりました。その時の雰囲気を伝えられるよう、執筆しましたので、是非ご覧いただければ幸いです。

今年のOB/OG会の会場は「DESK赤坂見附」という赤坂にあるお店でした。

19:15ごろ、一緒に来た数人の友人とともに、お店の前でオープンを待っておりました。

何気なく周りを見渡すと大野先生の後ろ姿が見えました。この時、声をおかけしようと思いましたが、実は卒業して以来、 大野・尾関研究室のイベントに参加したのは初めてで、大野先生にお会いするのも卒業以来になってしまっており、「会が始まったらお話ししよう..」とすこし守りに入ってしまいました。

しかし、そう思っていたところに

「OBだよね?若いから学生かと思ったよ~!来てくれてありがとう!」と、4年前と変わりのない、あのパワフルな声と笑顔で大野先生の方からお声をかけていただきました。数年ぶりとなってしまっていたので、少し気が引けていたのですが、そんなこと大野先生には全く関係ないんですね!久しぶりという過去ではなく、今、この場に一緒にいることを楽しんでおられるように見えました。大野先生のメールマガジンを拝読していると、「仏教」という言葉が度々目に留まります。「今を生きる」。そのようなお考えが、自然と言動にあらわれているのだなぁと感じ(少し大げさでしょうか?笑)、変に大人のふりをした自分に反省です。

学生時代、研究室で仲間と研究や勉強会、カードゲーム、鍋など、今を全力で楽しんでいた、あの日々を思い出しました。そして、あの時から何も変わらない大野研究室がそこにあり、大野研究室はやっぱり大野研究室でした。

そのようなアットホームな場所に自然と人は集まります。総勢52名ものOB/OGの方々と、19:30に全員で乾杯です!

今年は”ONE TEAM”が流行語大賞に輝いた通り、ラグビーが非常に盛り上がりをみせました。(かく言う私も、これまでラグビーとは縁がなかったのですが、しっかりと、にわかファンの一人になっていました(笑))ということで、川島孝一さんと葛山康典教授によるラグビーのお話からスタートです。その中で、初めて知ったのですが、この会の翌日の2019年12月1日には、大学ラグビーの関東大学対抗戦があり、そのカードがなんと早稲田×明治(早明戦)でした。結果は残念ながら大敗でしたが、今後の早稲田のラグビー、日本のラグビー、私もしっかりウォッチしていきたいと思います!

20:00、OB/OG一人ひとり、自己紹介です。自己紹介の最中に、中川慶一郎先生、私、ある後輩の3人で話していました。

後輩の自己紹介の順番になり、所属企業をいうと、それまで一緒に話していた中川先生がすかさず「早く言えよ!(笑)」とツッコミを入れるという場面がありました。それもそのはず、中川先生とその後輩は、同じNT○データ出身だったのです。そこから、どの部署にいるの?○○さんのところ?というように会話が弾んでいました。(NT○データではない私は全くわかりませんでしたが(笑))

この光景を見ていて、私は改めて大野研究室のネットワークの広さというものを感じました。

私自身、この会の中でメディアや金融、コンサル等、様々な業種の方とお話しさせていただきましたが、どの業界の方も少なくとも一人は必ずいます。

これまで、大学を卒業すると、学生ではなくなり、徐々に学校から離れていくような感覚がありました。

一方で、昨今、終身雇用が当たり前ではなくなる中、社外からも情報を集め、この社会を正確に俯瞰して見られるバランス感覚の必要性を強く感じます。

学問を終え一度離れたと思っていた大学が、これからは社会の情報が集まるハブとして、引き続きお力添えいただける存在だということに気がつきました。

20:30-22:00にかけては、現役の学生含めてフリーで懇談しました。

私が学生の頃にOB/OG会に参加した際は、フリーの懇談となると、各々の仲いいメンバーの間で盛り上がってしまい、結局はいつものメンバーでいつもの話をするという流れが多かったように感じます。そのため、今回、少なくとも自分は学生と話そうと思い、すぐに話にいきました。

しかし、話も一段落して、周りを見渡してみると、私の思っていたOB/OG会とは違う光景がありました。

なんと、色々なテーブルで学生とOB/OGが一緒に話をして盛り上がっています!今のOB/OG会では、年代関係なく上下の交流が当たり前になっていたのです。

これまでのOB/OG会といえば、みんなで昔を懐古する、同窓会的な要素が強いと思っていましたが、今となっては、学生が様々な業界の方から情報を集められる最強のOB訪問の場になっていました。

今回のOB/OG会では、様々な業種の方々が昔から変わらぬアットホームな雰囲気により集まり、その中で幅広いネットワークが形成され、情報が集まっているという良い循環があることを感じました。大野研究室・尾関研究室OB/OG会は、早稲田大学と社会とをつなぐ架け橋としての役割があり、そして私自身、その橋の一部としての責任を強く感じる一日となりました。

大野先生、並びにこの会にご参加くださった皆様へ、このような素晴らしい機会を下さったことに心より感謝申し上げます。

                   島崎 芳幸

(追伸)

22:00、今年の大野研究室・尾関研究室OB/OG会も終わりの時間です。参加者全員で記念写真を撮りました。世代を超えて、”ONO TEAM”が”ONE TEAM”に!

学生のみなさんアンケート答えましたよ~!卒論ラストスパート頑張ってください!

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【5】OB/OG会報告(幹事:田中・富田)

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OB/OG会ご参加どうもありがとうございました

当日は、多くのOB・OGさんにお越し頂き、とても嬉しかったです。

様々なお話を聞くことができ、非常に勉強になりました。

特にこれから就職活動を迎える学部生や大学院生は、業界や仕事内容のお話をお聞きし、今後の就職活動に大いに活かすことができると思います。

学生一同有意義な時間を過ごすことができました。

本当にありがとうございました。

幹事:田中里奈 富田凌平

<スピーチする参加OB/OGの皆さま>

井上順司さん 佐藤太一さん 小川司さん 堀口克昌さん 河野博行さん

近藤英朗さん 井上吉康さん 栗谷修輔さん 寺部優さん 本田亮彦さん

山本結花さん みな子さん・川島孝一さん みな子さん・高裕さん・河野さん 中川慶一郎さん

中村貴裕さん 熊谷和俊さん 葛山康典さん 丸山真輝さん 島崎芳幸さん

若尾康平さん 松元貴志さん 宮本龍寿さん 今井礼央さん 鈴木槙将さん 

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◇◆ 編集後記 ◇◆

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「e-OHNO MAIL NEWS第183号」はいかがでしたか。

e-OHNO MAIL NEWS で大野研OB・OGへ発信したい情報等ございましたらお寄せください。お待ちしております。

なお、バックナンバーは大野研究室のHP内でもご覧頂けます。

編集担当 摩嶋翼

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