e-OHNO MAIL NEWS 第195号 2020/12/28

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  e-OHNO MAIL NEWS 第195号 2020/12/28

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こんにちは。今月号のe-OHNO MAIL NEWSの編集を担当させて頂くこととなりました、B4の栗山航輔と申します。

今回のメールマガジンは、以下のコンテンツでお送りいたします。

■ 今月号のコンテンツ ■ (敬称略)

【1】 独立自尊  大野高裕

【2】リレーエッセイ第28号

  (シニアの部)  宮口直也

  (中堅の部)   棟近剛史

      (若手の部)   木村圭佑

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独立自尊   大野高裕

12月初旬に京都と奈良の県境・木津川市にある浄瑠璃寺(じょうるりじ)というお寺に参詣してきました。ここは奈良・興福寺の修行のお寺として建立されたそうですが、現世(東・此岸)と来世(西・彼岸)を結ぶお寺で、来世側にある本堂には9体の阿弥陀如来像が安置されています。本来、お寺ではご本尊の如来像は1体で、その周りを菩薩像、明王像や神将像が周りを取り囲むのですが、ここは9体すべてが阿弥陀如来像なのです。阿弥陀如来は私たちがあの世に渡るときに導いてくれる役割を持っています。私たちの人間としてのレベルは、上品・中品・下品、そしてそれぞれをさらに上生、中生、下生の分けて9通りになるそうです。例えば、「上品中生」という具合です。「あれは下の下だな」なんて言い方をしますが、9通りの最下等の下品下生のことを指します。その9種類の私たちに対して、9体の阿弥陀如来様がそれぞれ分担して対応してくださるそうです。東京にも東急大井町線に「九品仏駅」の傍には、九品仏浄真寺というお寺があり、そこにはやはり9体の阿弥陀如来像が安置されているそうです(まだ訪れたことはありません)。

その浄瑠璃寺の存在はテレビ番組で知りましたが、是非にと思って家内・みな子さんと二人で訪れました。境内の東側此岸に三重塔があり、池をはさんで西側彼岸に9体の阿弥陀如来像が安置してある本堂があります。現世の三重塔側から来世の本堂を眺めて、そして本堂側に歩いていく、つまり現世から来世に行くのですが、何か大きなものに抱かれているような安心感がありました。そして本堂の前に行くと、写真(左端で祈っているのがみな子さん)にあるように、三重塔と本堂の東西をきれいに結ぶ飛行機雲が現れたのです。ほんの1,2分のことでした。「大丈夫だよ、つながっているからね。安心してね」と教えてもらいました。普段は参詣者で賑わうお寺のようですが、シーズンオフに入ったところだったせいか、誰もいないのです。静寂と清らかな空気に満たされた空間と時間でした。

本堂の中にも入りましたが、もちろん誰もいません。阿弥陀如来像が手を伸ばせば触れそうな位置にあり、それぞれの表情や体形穏やかで暖かく、本当にあの世に導いていただけるなあとしみじみうれしく思いました。そしてこうした出会いをさせて頂いた意味として「もうちょっとだけこの世にいるのなら、ちゃんと皆のために生きていきなさい」と諭されました。

今年を振り返ると、コロナ感染があり、そして東アジアでは中国の露骨な世界制覇行動・北朝鮮の核武装・韓国の中国回帰、さらにはアメリカの大統領選挙に象徴される社会的大混乱などがありました。一つひとつを眺めるといろいろと議論になりそうですが、共通のキーワードは何かというと、「安全保障」だと考えます。コロナによって世界規模のサプライチェーンが脆いことに気づかされました。どこかの国が日本への供給(たとえばマスクやワクチン)を停止すれば、たちどころに日本人の生活や生命が成り立たなくなります。東アジアの情勢は直接的な日本への武力的侵略の脅威です。アメリカの混乱は、もう極東の日本の安全保障を肩代わりできる余裕などはどないということに直結します。

「国」というのは何かというと、国民の生命と財産を守る存在です。そして国民はそれを享受するために納税や国防の義務を負うという関係にあります。先月号にも書きましたが、日本は敗戦でアメリカに占領されてから70有余年間、国民の生命・財産を守ることをアメリカに任せてきました。というよりはアメリカの世界覇権の力と意向でそうせざるを得なかったわけです。ところが、そのアメリカの世界覇権に中国が挑戦する状況となり、世界秩序の基盤が大きく崩れてきました。

では私たち日本国と日本国民はこれからどうするのか? これが明白な形で突き付けられた「元年」が今年2020年だったと思います。アメリカがダメなら中国に面倒を見てもらうのか? しかしそれは国民の生命・財産を他国に委ねるのですから、真の独立国家とは言えません。属国です。幸いなことに日本は有史以来、直近の70余年以外は独立国家としての尊厳を守ってきました。そのDNAは脈々と生きています。もちろん、グローバルな時代ですから、江戸時代みたいに鎖国なんてことはできませんから、世界のパワーバランスの上にうまく舵取りをしていくことは必須です。しかし、国民を自らの手で守るという意志と行動は確固たるものとして持たなければならないと思います。(鬼滅の刃の精神ですね)

私たち国民を守ってくれる存在として、自衛隊の方々がいらっしゃいます。これまで、憲法第9条の問題もあって、彼らは常に自らの命を張ってくださっているのに、一般国民からは正当な感謝をされることのない日陰的な存在でした。国民は勝手なもので、コロナも含めて災害の時だけは、救援要請をして頼るのに、自衛隊の存在については知らぬふりをする。これが今でも続いています。自衛隊があると、軍備があると、さも日本が戦略戦争でも起こすのではないかと妄想します。そうしたことを声高に叫ぶ人たちもあちこちにいます。特に学者やマスコミに顕著ですね。しかし、私たちは独立自尊の存在として、家族・友人などを自らの手で守る気概を持つことが不可欠なのです。そうでないと、近い将来、日本と日本国民は植民地化してしまう恐れが高いと考えます。

そうした思いに駆られて、私は自衛隊の方々を精神的にサポートする組織である東京都防衛協会に入会し、今年9月には新宿防衛協会を立ち上げて副会長として活動を始めました。頼まれて会報に原稿も書きました。添付しますのでこちらも読んでいただけたら幸いです。こんなことをカミングアウトすると、「おいおい、大野、大丈夫かい?」「ネトウヨの仲間入り?」などと囁かれそうですが、私は正気のつもりです。世界の誰とでも仲良くすることは極めて重要です。もちろんそれを目指すことはこれまでと不変ですが、私たちを害する意図がある人たちとは勇気をもって対峙することも必要です。すべての人が幸せになるためには、それぞれが一定の「我慢」することは不可欠です。しかし「犠牲」になってはいけません。「我慢」はお互いに共通の目的や幸せのためになされるものですが、「犠牲」には共通の目的や幸せなどなく、誰かの一方的な利益搾取のために行われることです。これは許されるものではありません。

私は残されている生きている時間をこれまで50年間紡いできた早稲田精神をベースとして、一人ひとりが謂れなき犠牲とならないようにするために、積極的に発言をし行動をしていこうと改めて決意しました。批判を恐れず信じたことを怯まずに実行するのも早稲田精神ですから、出る杭はガンガン打たれよう思っています。

早稲田大学建学の父・大隈重信の分身であり「建学の母(といっても女性ではない)」と言われた小野梓(おのあずさ)は1882年早稲田大学の前身・東京専門学校開校式において、「一国の独立は国民の独立に基ひし、国民の独立はその精神の独立に根さす、而して国民精神の独立は実に学問の独立に由る」と述べています。これが早稲田の最初の建学の精神ですから、私もここに立ち戻って独立自尊のためにさらに行動しようと考えています。もしも、私の考えにご賛同いただける方がいらっしゃいましたら、ご連絡ください。よろしくお願いいたします。

ではみなさま、よい年をお迎えください。来年はもっともっと良い年にしましょう!

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リレーエッセイシニアの部 宮口直也

みなさま、ご無沙汰しております。2004年修士修了、2012年博士修了の宮口です。

前回のリレーエッセイでもお伝えしておりましたが、私は2013年に約20年務めた会社を退職、アジュアスカイコンサルティング株式会社を設立し、主に新事業構築、新製品・サービス開発のコンサルティングを行っています。

新事業構築…といった響きは、学生諸君には華々しく魅力的に聞こえるかもしれません。しかし、こういった難題突破の局面というのは、なかなかに大変で、じわじわと考え続けなければならないため、むしろ地味な側面さえあるほどです。

このようなお仕事で、クライアント企業の社長、経営者、プロジェクトマネージャーといった、百戦錬磨、徒手空拳…、いわば肝の据わった方々とお付き合いさせていただいておりますが、そういった方々にあっても、この新型コロナのダメージはなかなかのものがあります。

ということもあり、親しくさせていただいている社長のお声がけで、この難局を乗り切るために体力をつけようと50歳にしてサーフィンを始めました。

これがやってみると奥深く面白い。体力やバランス感覚も要るし、何と言っても事業経営に似ていて、波に挑んでいくような“ワイルド”な心持が要求されることが分かりました。

ある日、先輩サーファーがこう教えてくれました。「サーフィンは行くかヤラれるかだから」と。確かにビビりながら行くとほとんど確実にヤラれます。

実力以上の波に挑むと…、水中3回転、命の危険さえ感じることもあります。一方で実力以上の波に行かない限り「やった!」という達成感は得られないことも分かっています。

ここで難しいのは、「ちょうど良い波」というのがまず来ないことです。自然相手なので仕方ないことですが…(笑)

写真は今年の6月、サーフィンを始めた頃のものです。まずは3年を覚悟し、修行してみるつもりです。大野研OB・OGにサーファーの方がいらっしゃいましたら、ぜひともご指導のほど、よろしくお願いいたします!

次は、修士時代の同級生、井上利浩さんにお願いしております!

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リレーエッセイ中堅の部 棟近剛史

皆さまこんにちは(はじめまして)。2011年修士課程修了の棟近剛史です。

私は卒業後ソニー株式会社に入社し、現在半導体事業の企画管理部門で勤務しております。半導体事業の経営企画というのは珍しい(?)かと思いましたので、今回はどのような事業なのか、その中でどのような業務をしているのかご紹介できればと思います。

半導体はBtoB事業が中心ですのでソニーグループの中でも知名度は低いほうだと思います。2019年度でみると、ソニーグループは連結で売上8.2兆円、営業利益8,400億ほどの会社ですが、そのうち半導体は売上1兆円、営業利益2,300億という規模感になります。主力製品はイメージセンサーという半導体です。デジタルカメラで写真を撮ると、レンズから取り込んだ光がイメージセンサーに照射され、電気信号に変換されます。人間の眼でいうところの網膜の役割に相当する部品で、写真の画質に大きく影響します。ソニーはこのイメージセンサー市場で金額シェアが約50%です(2位は韓国Samsung LSI)。現在は出荷数の8割ほどをスマートフォン向けが占めており、おそらく皆さまが普段使っているスマホにも結構な確率で搭載されているのではないかと思います。スマートフォン市場は既に成熟していますが、1台あたりのスマホに搭載されるカメラの数が増加(多眼化)するトレンドがしばらく続くとともに、自動車やFA(Factory Automation)領域向けの市場も拡大していくことからイメージセンサー市場は今後も成長が見込まれています。市場規模としては大体2兆円、CAGR10%前後の市場です。

半導体メーカーでは自社ファブを持つかどうかで戦略がわかれますが、ソニーは製造ノウハウに強みがあるため自社ファブを持ちながら経営しており、現在も設備の増強を毎年繰り返しています。2018~2020年度の3年間で営業キャッシュフローを2.2兆円創出することをソニーグループ全体での目標としていますが、このキャッシュの半分程度をイメージセンサー向けの設備投資で使う計画になっています。金額の大きさにプレッシャーを感じる一方、経営企画担当としては面白さを感じる部分でもあります。

そんな中、私個人としては中長期的な戦略検討、意思決定スピードの迅速化のため、モバイル向けイメージセンサービジネス全体(市場想定~投資・生産計画策定~経営数値算出)を財務モデルに落とし込み、意思決定を経営数値面からサポートしています。具体的には、スマートフォンの市場台数予測からスタートし、スマホメーカー各社のシェア、ラインナップを想定してスマホに搭載されるカメラ総数を予測。ここに対して自社のどのようなイメージセンサーで何割のシェアを取るか想定しセンサー需要数量を算出します。この数量から必要生産キャパシティや、いつどれだけの投資/生産が必要になるかを計算し、売上、営業利益、C/F、ROICといった経営数値を一貫でシミュレーションします。

モバイル市場は元々変化が激しい業界ですが、最近では米中貿易摩擦の影響もありなおさら不確実性が高まっており、市況に応じた柔軟な意思決定が重要になってきています。一方、半導体製品は一般に製造リードタイムが長く、材料投入から製品出荷まで数ヶ月かかります。キャパシティを増強したいとなると製造設備の納入/立ち上げに更に半年、工場の建屋から作るとなると更に1年以上期間が必要になるような時間感覚です。市場成長に対して機会損失を生まないようにキャパシティを増強していく必要がありますが、増強しすぎて自社工場の稼働率が落ちてしまうと経営数値面ではマイナスです。適切な時期に適切なキャパシティを構えることが重要ですが、その意思決定は1年~2年前に行わなければならない、ということになります。この意思決定のためには複数のシナリオを想定しておくこと、計画策定リードタイムを短縮してなるべく最新の情報をもとに意思決定できるようにすることが重要です。

半導体は製造に数ヶ月かかるだけあって設備の数が膨大で、ラインバランスを考えながら負荷検証して詳細な生産計画を作成するのには数十日単位の時間がかかります。日々の製販管理のためには必要ですが、中長期的な戦略を複数パターン検討するには時間がかかりすぎるというジレンマがあります。そこで、前述した財務モデルをもとに、多少精度面は落としながらもスピーディに戦略を検討することに価値がでてきます。例えば「スマホ市場の成長率が変わったら?」「A社ではなくB社に重点的に供給する戦略に切り替えたら?」「自社だけでなく委託生産も検討したら?」等、様々な可能性を検討し、数値影響含めて示すことで状況に応じて取りうる選択肢を複数準備しておく。この点で経営企画として貢献できる幅が広く面白い事業だと感じています。

私は研究室に在籍していた頃はリアルオプションを専攻していました。リアルオプションは不確実な状況に対応するため意思決定を待つことに価値を見出す学問です。現在、私は様々なシナリオ(=不確実性)をシミュレーションしながら意思決定を支援する仕事をしているわけで、当時身に着けた考え方が通ずるところが多いと感じています。今後も、大野研で身に着けた考え方をもとに、事業価値向上に繋がる仕組みづくりに貢献できればと考えています。

写真は、テレワーク中に家で撮影した息子のはじめてのお掃除(ごっこ)の様子です。2020年はコロナ禍における特殊な年でしたが、私の部署は3月以降ほぼ100%テレワークに切り替わりました。テレワークによる良い点悪い点は両方感じたものの、普通に出勤していた頃は見ることができなかった子どもの小さな成長を間近に見ながら日々過ごすことができるのはとても嬉しいことであり、アフターコロナにおいてもテレワークを併用した働き方が定着すると良いなと感じています。

ここまで、長文にお付き合い頂きましてありがとうございました。次の中堅の部のバトンは、同期の熊谷に渡したいと思います。

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リレーエッセイ若手の部 木村圭佑

はじめまして、2019年学部卒の木村圭佑と申します。

卒業後は、キヤノン株式会社に入社しました。配属面談では、東京かつ工場以外を希望しておりましたが、希望が叶うことはなく、入社以来滋賀の工場で働いています。当初はめちゃくちゃ田舎の滋賀に不満もありましたが、意外に立地が良く関西・中部の色々な場所に短時間で行くことができるので、今ではそこそこ楽しむことができています。

仕事に関してですが、現在は調達部として生産材の購買業務に携わっています。購買業務の目標は、品質の良いものをより安く、適切な納期で手に入れることです。多数の取引先と同時に交渉しつつ、最適な取引先・生産材を選定していきます。この仕事の醍醐味は、色々な会社の社長と接点を持つことができる点です。普段はいわゆる町工場の社長を相手に仕事をすることが多いのですが、職人気質で頑固な人が多く、最初はなかなか手強いです。ただ、一度信頼関係を築くことができれば、こちらの要望に親身に対応してくれます。また、事業を通じて社会貢献に努められている方もたくさんいて、そういった方々の生の声を聞くことは非常に勉強になります。魅力的な社長には、まさに近江商人の「三方よし」を体現されている方が多く、仕事をする上でその重要性を改めて実感しています。私自身はまだまだ未熟で自分のことで精一杯になりがちですが、「三方よし」の意識は常に持ち、今後も仕事に精進してまいります。

最後に、滋賀で1番美味しかった食べ物の写真を載せておきます。近江牛は意外とリーズナブルなので、機会があればぜひ召し上がってみてください。

次回は、同期の田口くんにバトンタッチしたいと思います!

適度に仕事の休みを取って書いてください!

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◇◆ 編集後記 ◇◆

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「e-OHNO MAIL NEWS第195号」はいかがでしたか。

e-OHNO MAIL NEWS で大野研OB・OGへ発信したい情報等ございましたらお寄せください。お待ちしております。

なお、バックナンバーは大野研究室のHP内でもご覧頂けます。

編集担当 栗山航輔

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「e-OHNO」は、大野研のOB・OGへ毎月17日の配信を予定しています。

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