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e-OHNO MAIL NEWS 第166号 2018/07/17
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今月号のe-OHNO MAIL NEWSの編集を担当させて頂くこととなりました、学部4年の岩井優太と申します。
今回のメールマガジンは、以下のコンテンツでお送りいたします。
■ 今月号のコンテンツ ■
・歴史誕生の中に生きている自覚 大野高裕
・リレーエッセイ第1号
(シニア) 石田昌宏
(中堅) 小川竜一
(若手) 鈴木道大
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歴史誕生の中に生きている自覚 大野高裕
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今月号からOB/OGによる「リレーエッセイ」が始まりました。執筆をお願いした方々にはお忙しいにも関わらず、快く引き受けてくださり、そして原稿を締切よりも大幅に早く出していただきました。 私は毎月提出が遅れてしまっているので、そのため、本当は毎月17日発行のはずなのに、いつも遅れてしまって、とても恥ずかしい気持ちでいっぱいです。ゼミでは「遅刻厳禁!」と言っているのに、自分だけには「大甘」なのは、本当に人として情けない・・・。 反省して行動を直したいと思います。
リレーエッセイの内容は、皆さん限られた字数の中で、実にコンパクトに近況を書いてくださいました。どうかお楽しみください。そして今後もうまく続いていくように、どうかOB/OGの皆さまご協力くださいませ。
さて、先日、原田伊織という人の「明治維新という過ち」という3冊からなる文庫本を読みました。著者の言いたいことの大意は、「明治維新は日本が封建主義から近代化へと進化させた革命として美化されているが、内実は薩長が国家ビジョンもなく、ただ江戸幕府を倒すことだけを目的に行ったもので、そこにイギリスを主とする植民地的支配の意図が働き、武器や資金を投資して日本人同士の殺し合いをさせた醜いクーデターだ」ということでした。
私は幕末から維新の歴史小説が学生の頃から大好きで、特に司馬遼太郎の本は、ほとんどあらゆるものを何度も何度も熟読しました。特に坂本龍馬の「竜馬が行く」は愛読書で、高知・桂浜で龍馬の立像を見た時には感激したことを覚えています。武田鉄矢は砂浜でのた打ち回って泣いたそうですが、そこまで行かずとも胸が打ち震え、龍馬のような人になりたいと思ったものです。
ところが、原田氏の言によれば、龍馬像は司馬遼太郎が作り出した創作・幻想に過ぎないというのです。何ももたない浪人の龍馬が薩摩と長州を結びつけることなどできないし、莫大な量の武器弾薬を調達して薩長の倒幕のための軍事力を生み出すこともできない。要は武器商人のグラバーにあるというのです。グラバーというのは長崎にあるグラバー邸に住んでいたあのグラバーです。グラバー商会はイギリスの植民地支配を請け負った東インド会社の流れを汲むジャーディン・マセソン社の日本代理店でした。東インド会社はアヘンをインドで栽培・生産してこれを中国・清に持ち込んで巨万の富を得るとともに、悪名高いアヘン戦争を起こして清国を衰退・滅亡へと追い込んだ役割を果たしました。HSBCで知られる世界有数の銀行である香港上海銀行もイギリス資本でアヘンの取引、植民地支配に一役買っていました。
さて、当時のイギリスはアジアの最東端の日本にも植民地化の食指を動かしていたはずで、彼らの常套手段である反政府勢力へ武器弾薬などを肩入れすることで倒幕を果たし、自分たちの意のままになる新政府を作ろうとした。その過程で、表舞台で反政府勢力を武器によって結びつけたり、運んだりしたのが坂本龍馬でその程度の役回りに過ぎなかったというのが原田氏の見解です。
この考え方が正しいかどうかはさて置き、私が気づいたことが3つあります。それはまず第1に、モノゴトを一つの側面からのみで捉えてはいけないということです。特に歴史は勝者によって作られます。日本史を辿ってみても、古くは大和朝廷と対峙した出雲大社に祀られている大国主命(オオクニヌシノミコト)はその地を天照大神(アマテラスオオミカミ)に国譲りしたと古事記に書いてありますが、これは勝者側の書いたことで、大国主命のサイドからすれば、「そうじゃなくて、こうだったんだ!」と言いたいこともあるでしょう。明治維新についても坂本龍馬も含め、勝者が公式見解的に歴史を述べ、それを私たちが学校などで教科書から受け入れてきたという部分が大きいかと思います。話のストーリーの分かりやすさとしては勝者から見るほうが納得しやすいですから、どうしてもそうなってしまう嫌いがあろうかと思います。しかし敗者であった幕府官僚たちからの視点や情報も同じように手に入れないと偏った認識や判断をしてしまうと改めて感じました。
2つ目に気づいたことはモノゴトは視野を広く持って把握しないと局所的で表層的な認識や判断しかできなくなってしまうということです。明治維新も江戸幕府と薩長勢力との争いだと、実際に戦った2大勢力の動きにしか目が行かないのですが、よくよく考えてみれば、当時だって世界の動き、それも欧米列強の弱肉強食の植民地支配の大きなうねりの中での事象でした。当然、日本のことも他のアジア諸国と同様に収奪しようと欧米列強は狙っていたはずです。しかし、せいぜい目が届くのは、高杉晋作が上海に行って現地の悲惨な状況を見て、この二の舞にならないためには「幕府を倒さねば!」(これも司馬遼太郎で読みました)ということだとか、アメリカの南北戦争が終わって余った武器が大量に日本に流れてきて、それが戊辰戦争で使われたということくらいのことです。あるいは日本の社会・文化・教育水準が他のアジア諸国に比べて高かったので、欧米は植民地化を諦めたなどということは言われています。
しかし、そんな簡単においしそうな利権をあきらめるわけがありません。何か別のウマイ方法はないものか? と探したり工夫したりするのが当然でしょう。現在だけでなく、明治維新当時も、あるいはもっと古い時代、例えば聖徳太子の時代だって遣隋使を送ることは中国を含む世界情勢の中で決断されていたはずです。決して中国・隋と日本の関係だけでなく、少なくとも韓半島や東南アジアの動きも見定めて聖徳太子は動いていたことでしょう。
原田氏の言うごとく、グラバー商会がイギリスの植民地支配の手先だったかどうか、これは私には知識不足でわかりません。しかし、グローバルな動きの中で幕末や明治維新が起こった、あるいは大きな影響を受けた、さらには表立っては出てこない陰の重要な主役が存在していることは確実でしょう。私たちはついつい目の前にあることに気を取られて近視眼的になり、周りを大きく見ようとはしません。そのほうが単純で考えるのには楽だからです。しかし、いかに視野を広く持つのか、もちろん視野を広げればそれだけ様々な要因が入り込んできて、それらが複雑に絡み合うのですから、とても面倒なことです。それだけ単純なステレオタイプが世の中的にも受け入れられがちなのですが、そうなるとモノゴトの本質を見失います。少しでも背伸びをして広い視野を持ちたいものだと思います。広い視野と言っても抽象的なので、具体的のどうしたらいいか悩むところですが、これはまず、組織内、地域内、国内、グローバルと問題を「空間的」に広くということがあるでしょう。次に現在、数ヶ月、数年、数十年と「時間的」に広げていく軸があります。さらには問題を解決するためのツールである「技術的」に広げるという軸もあろうかと思います。そして多様に存在する「価値的」に広げるということも要因として取り上げてもいいかと思います。
3つ目の気づきは「歴史は他人事ではない」ということです。歴史というと私たちとは関係ない終わったものという意識になってしまいますが、考えてみれば、私たちが今、生きて行動している結果はいずれ「歴史」となります。つまり歴史を作っているはずなのですが、なかなかそういう意識になれません。私たちが歴史を読むと、例えば「なんで徳川慶喜は鳥羽伏見の戦いで味方を見捨てて大阪から軍艦で江戸に逃げたんだ、リーダーとして無責任!」などと言いたくなるのですが、今、私が決断していることが将来の人たちから見れば、そういう批判の対象になるはずなのです。私が決断していることなど小さなことですが、しかし例えば大学の将来に関わることにもいくつか決断して実行してきました。グローバル化とか組織再編とかやってきたことが果たして未来の「歴史」として耐えうるだけの決断までの立体的な分析、熟慮、確信を持った決断、そして不退転の実行をしてきたのか、しているのかと自問すると、ちょっと自信がありません。
考えてみると、明治維新から太平洋戦争敗戦まで77年でした。その敗戦から現在までが73年ですから、もうほとんど同じだけの時間が流れています。明治から敗戦に至るまでにはとても大きな変化があったと、私たちはだれでも認識していることでしょう。廃藩置県、断髪令、西南戦争、殖産興業、富国強兵、日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦、5・15事件、2・26事件、日中戦争そして太平洋戦争・・・。ちょっと挙げてみても相当のことがありました。激動の70年余だったと思うのですが、おそらくそれと同じことが戦後70年余についても将来の人たちは分析・評価し語っていくことでしょう。そうしたことを考えると、私自身でも戦後の歴史を総括しておく必要があるように思います。少なくとも70年余の大半を生き、主人公の一人として体験してきたはずであり、自分も小さいながらも例えば選挙の投票などによって意思決定に加わってきたのですから。
この夏休み、ちょっと時間ができそうなので、本を読んだり、考えてみたりして、自分なりの戦後70年余の歴史の総括を始めてみたいと思います。そして、まだこれからも生きている限り、歴史を作っていく立場であることを肝に銘じて、他人事ではない「今からの歴史」に取り組んでみたいと思います。
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リレーエッセイ第1号
(シニアの部) 石田昌宏
(中堅の部) 小川竜一
(若手の部) 鈴木道大
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(シニアの部 第1号) 石田昌宏
平成3年に卒業して就職せず、数ヵ月後の公認会計士試験に無事合格して27年たちました。
今は名古屋駅の近くで税理士法人の代表をしています。
節税対策は連立方程式や確率論の問題だと思うし、業務用の管理ソフトやホームページは自分で作成できたし、今の仕事は理系に断然有利だと思います。
仕事を通じて税務会計だけでなく、ITや法律問題、保険、不動産、相続など、多くの知識や経験を得ることができ、日常生活でも役立っています。
原価ゼロのサービス業なので、無償で誰かをサポートして感謝されることも多く、ありがたい仕事だと感じています。
最近は、決算書を過度に良く見せようとすれば粉飾詐欺、悪く見せようとすれば脱税の幇助罪といった具合に、決算の選択幅が小さくなる一方、税理士のリスクは非常に大きくなりました。
50歳を期に税理士業務は徐々に収束させ、何か他のことで、残りの人生もう一花咲かせられたらと考えるようになりました。
(中堅の部 第1号) 小川竜一
こんにちは!2006年度修了の小川竜一と申します。大野研では珍しい建設業界(鹿島)に飛び込み、早12年が経ちました。数理系という職種で入社し、今までに社内システム開発、現場のインフラ構築、建物内設備の設計・施工に携わりました。現在はITソリューション部企画管理グループという部署で、デジタル化を推進するための技術調査や、採用、育成などを担当しています。建設業では今後、技術労働者が大きく減少することが予測されており、自動化施工やIT活用した生産性向上に気合いを入れて取組んでいます。大野研の学生のみなさん!当社が少しでも気になりましたら、ぜひご連絡ください!
プライベートでは3歳と0歳の娘がおり、趣味が旅行ということもあり、週末はよく家族で出掛けています。大野研の頃からイケメンになることは諦めていましたが、今は何とかイクメンになるべく奮闘しております。
さて、次号は卒論作成でご指導いただいた一つ上の先輩である鈴木悠哉さんにお願いしたいと思います!このリレーエッセイを機に懐かしい方とコミュニケーションが取れることに感謝いたします。
(若手の部 第1号) 鈴木道大
大野研究室メルマガの新企画リレーエッセイに若手枠で選ばれました2018年3月卒業の鈴木道大です。
社会人になって3ヶ月ほど経ちましたが、まだまだ覚えることが多く、毎日が学習の連続です。
私の仕事についてですが、SEとして人事給与システムの開発に携わっています。使用している言語はJavaです。
今月に入って製造からテストに工程が移動し、日々見つかるバグの修正に追われています。
忙しい現場ですが、その分学ぶことも多く非常に充実した時間を過ごしています。
何かの写真を添えてほしいとのことでしたので3月末に旅行に行った縄文杉の写真を載せておきます。
写真では伝わりにくいですが、存在感というかパワーが凄かったのでオススメの場所です。
この旅行で食べた牡蠣があたって出社一日目に会社でゲ○吐いたのは良い思い出です(笑)
まとまりのない文章となりましたが、この辺りで締めさせていただきます。
次にリレーするのは同期の石塚君にお願いしたいと思います!
大野研究室の皆様のご健勝をお祈りいたします。
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◇◆ 編集後記 ◇◆
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「e-OHNO MAIL NEWS」第166号はいかがでしたでしょうか?
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なお、バックナンバーは大野研究室のHP内でもご覧いただけます。
第166号編集担当 岩井優太
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